長編みの立ち上がりで隙間を防ぐコツとは

ハンドメイド

かぎ針編みの基本技法の一つである「長編み」。この技法は、初心者から上級者まで多くの編み物愛好家に親しまれており、作品に立体感やボリュームを与えることができるため、非常に人気があります。

ただし、特に立ち上がり部分では目が緩みやすく、そこに隙間ができてしまうという悩みを抱える方も少なくありません。こうした隙間は作品全体の見栄えや仕上がりの印象に影響を与えるため、なるべく避けたいポイントです。

この記事では、「長編みの立ち上がり」に関する基礎的な知識から、初心者でも取り入れやすい隙間を防ぐテクニック、さらに立ち上がりを美しく見せる工夫まで、段階的にわかりやすく解説します。

これから長編みにチャレンジする方にも、すでに取り組んでいる方にも役立つ内容を目指しています。


長編みの立ち上がりとは?

長編みとは?

長編みは、かぎ針編みでよく使われる基本的な編み方の一つで、初心者から上級者まで広く活用されています。

鎖編み(くさりあみ)や細編み(こまあみ)を習得した後に覚えることが多く、糸を一度針にかけてから目に通し、三回に分けて引き抜くことで1目を作ります。この工程により、細編みに比べて高さがある編み目になり、仕上がりがふんわりとした印象になります。

長編みはスカーフやショール、ブランケットなどの大きな面積を必要とする作品にも適しており、時間をかけずにボリュームを出せる点が魅力です。

立ち上がりの重要性

長編みを段ごとに編み進める際、「立ち上がりの鎖」がとても重要な役割を果たします。

この鎖目は段の高さを確保するために必要ですが、適切に編まれていないと、全体の形が歪んでしまったり、段と段の間に大きな隙間ができてしまう原因になります。

また、立ち上がりが緩すぎるとゆがみやすく、逆にきつすぎると引きつれてしまい、美しい仕上がりが損なわれます。そのため、立ち上がりを毎段正確に、かつ自然に仕上げることは、作品全体の完成度に直結する大切なポイントです。

長編みと細編みの違い

長編みと細編みは、編み物の表情を大きく変える技法です。

細編みは1回の引き抜きで目を完成させるため、密度が高く、目の詰まったしっかりとした編み地ができます。それに対して長編みは、糸をかけた状態で引き抜きを三度行うため、編み地に高さが出て、軽くふわっとした柔らかな印象に仕上がります。

また、立ち上がりに使用する鎖の数も異なり、細編みでは1目、長編みでは3目が一般的です。これにより、段の切り替え部分でも目の高さを揃える必要があるなど、それぞれの技法には独自のポイントがあります。


立ち上がりに隙間ができる原因

鎖編みの役割とは

長編みの立ち上がりには、通常「鎖編み3目」を使いますが、これは長編み1目分の高さに相当するとされています。

しかし、この鎖編みは通常の長編みとは構造が異なり、見た目にも違いが生じやすいのが特徴です。特に糸の張り具合や編み手のテンションによっては、鎖目の部分が緩みやすく、隣接する目との間に不自然な隙間ができてしまうことがあります。

また、鎖編み自体は実際の目としての厚みや張りが少ないため、周囲の編み目とのバランスを取りづらいという課題もあります。こうした点を理解しておくと、より自然な立ち上がりの工夫につなげやすくなります。

目数を正確に数える方法

長編みでは、立ち上がりの鎖目を「1目」と数える場合と、数えずにその次の目からカウントする方法があります。

これを間違えてしまうと、段の終わりで目数がずれたり、左右の形が歪んでしまうことがあるため、非常に注意が必要です。使用する編み図やレシピによって数え方が異なる場合も多く、あらかじめ指示をしっかり確認することが大切です。

さらに、各段で数える位置を紙にメモしておく、マーカーを使用するなどの工夫を加えることで、より正確な目数管理が可能になります。

最初の段で気をつけるポイント

編み始めの1段目は、特に立ち上がりの位置や編み始めの目に注意が必要です。

多くの場合、立ち上がり直後の目には編み入れず、その次の目に長編みを入れることになりますが、編み図によっては立ち上がり目を実際の目として数える指示がある場合もあります。

誤って立ち上がりの目に編み込んでしまったり、1目飛ばしてしまうと、段の最後で目数が合わなくなる原因になります。また、立ち上がりを始める位置がずれてしまうと、全体の形に歪みが出ることもあるため、編み始めの段は特に慎重に、丁寧に確認しながら編むことが求められます。


隙間を防ぐためのコツ

適切なかぎ針の選び方

糸の太さに合った針を使うことで、立ち上がり部分のテンションを安定させ、隙間を防ぐことができます。

特に、糸が太い場合には大きめのかぎ針を、細い糸には細めのかぎ針を使うことで、バランスの取れた編み目になります。

また、かぎ針の素材(竹、金属、プラスチック)によっても滑りやすさやテンションに差が出るため、自分に合った針を見つけることが大切です。

実際に作品を作る前に、数センチ程度の試し編み(スワッチ)を行い、テンションや目の整い方を確認しておくのがおすすめです。このひと手間をかけることで、本番の編み地での隙間やゆがみを未然に防ぐことができます。

円を作る時の注意点

輪に編む作品、例えばコースターや帽子、モチーフなどを作る際には、立ち上がりの処理に工夫が必要です。

特に、毎段立ち上がりを「ダミーの目」として引き抜きでつなぐ方法を取ることで、段と段の継ぎ目が目立たなくなり、作品全体の仕上がりがより滑らかになります。立ち上がりを実際の編み目として使わず、後から本体の編み目として長編みを始めることで、立ち上がりによる段差や隙間が軽減されます。

さらに、最初の段で立ち上がりの高さを適正に設定することで、円の形も綺麗に整います。

二段目の編み方の工夫

二段目以降の編みでは、鎖の隙間に無理に長編みを編み込まず、「立ち上がりのすぐ隣の目」にしっかりと針を入れることが重要です。

これにより、立ち上がり部分の隙間を最小限に抑えることができます。また、立ち上がりを段ごとに目立たせないようにするために、2段目以降は目の配置を工夫し、模様の流れや位置をずらす技法を取り入れるのも効果的です。

加えて、2段目で立ち上がりに戻る際の引き抜き方も滑らかにつなぐように意識すると、全体の編み地がより美しく整います。


立ち上がりを目立たなくするテクニック

裏山を活用した編み方

鎖編みの「裏山」に長編みを編み込むことで、正面から見た際により自然な流れになります。

通常の鎖編みは表側の2本の糸で構成されていますが、その裏側にある1本の糸(裏山)に針を通すことで、表面の編み地に段差や凹凸ができにくくなり、より滑らかに仕上がります。

また、裏山を拾うことで、立ち上がりの鎖が目立たず、自然に本体の目と一体化して見えるため、段の継ぎ目がわかりにくくなります。この方法は特に輪編みや模様編みの際に効果を発揮します。

長編みの高さを調整する方法

立ち上がりを「鎖編み2目+中長編み」に変えると、長編みと高さがより近くなり、仕上がりが安定して自然になります。

通常の鎖3目では高さが過剰になりがちで隙間が空く場合がありますが、この代替手法により、編み目同士の高さのギャップが緩和されます。さらに、立ち上がり目を実際の目とカウントするかしないかで、段の整合性が変わるため、自分の編み癖や作品のデザインに合わせて調整してみてください。

また、この方法は目が締まりすぎず、柔らかな仕上がりを保てるため、初心者にもおすすめです。

隙間を隠す編み物の工夫

立ち上がり部分に「スタンディングトールステッチ(立ち上がりなしの長編み)」を取り入れると、最初から通常の長編みのように見えるので、段の境界がほとんどわからなくなります。

この方法では、鎖編みを使わずに針に糸をかけた状態から直接長編みを編み始めるため、目の構造が自然に他の長編みと揃いやすくなります。また、立ち上がりなしの編み始めにより、デザイン性の高い編み地を実現でき、特に色の切り替えや模様編みにおいてその効果が際立ちます。

スタンディングトールステッチを活用することで、プロのような滑らかな仕上がりを目指すことができます。


長編みとその他の技法

細編みとの組み合わせ

段によって長編みと細編みを交互に使うことで、隙間が出にくく、しっかりとした編み地になります。細編みは密度が高く、目が詰まりやすいため、長編みの隙間を補うような役割を果たします。

特に、ベビーアイテムや雑貨などの柔らかさとしっかり感のバランスが求められる作品では、この組み合わせが非常に有効です。

また、長編みだけでは単調になりがちな模様に変化を加えることで、視覚的にも楽しめる作品を作ることができます。色を切り替えながら編んだり、段ごとに模様を変えることで、より個性的な仕上がりに。

応用編み物に挑戦する理由

立ち上がりが綺麗にできるようになると、作品全体の完成度が飛躍的に高まります。

たとえば、円形モチーフを複数つなげてブランケットやクッションカバーを作るとき、各モチーフの立ち上がりが整っていることで全体の形が崩れにくくなります。

また、ウェアやバッグなどの立体的な作品に挑戦する際にも、立ち上がりの美しさがそのまま作品のプロフェッショナリズムに繋がります。応用作品では段数やパーツが多くなるため、最初の段での誤差が後々まで響くことも。

だからこそ、基本の立ち上がりをマスターすることが重要なのです。

他の編み方との違い

長編みは、少ない段数で高さを稼げるため、比較的短時間で大きな面積の作品が完成するという利点があります。

その一方で、細編みに比べて隙間ができやすいため、編み目の整え方や立ち上がりの工夫が必要です。中長編みや長々編みなどの他の技法と組み合わせることで、厚みや密度の調整がしやすくなり、作品の表情も豊かになります。

また、引き上げ編みや玉編みといった特殊技法を取り入れることで、より高度でデザイン性の高いアイテムにも挑戦できます。長編みの持つ自由度の高さは、工夫次第で無限に広がる表現の可能性を秘めています。


長編みの練習方法

基本の作り目から始める

最初は20目程度の作り目から、何段か繰り返して立ち上がりの練習をしましょう。

作り目のテンションを一定に保つことができるようになると、その後の編み地も自然と整っていきます。また、練習用にはコットン糸のようにほつれにくく編み目が見えやすい素材を使うと、自分の編み癖を把握しやすくなります。

基本に忠実に取り組むことで、スムーズに応用技術へ進むことができます。

時間を計って練習するメリット

1段編むのにかかる時間を測ることで、自分のペースや集中力の持続時間を客観的に把握することができます。

一定のリズムで編むことを意識するようになるため、テンションが安定し、全体の編み目が揃いやすくなります。また、目標時間を決めて練習すると、作業の効率化にもつながり、達成感を得ることで練習を続けるモチベーションにもつながります。

失敗から学ぶ練習法

隙間ができたり、目数がずれてしまった場合は、なぜそうなったかを丁寧に観察することが大切です。どの段で目が増減してしまったのか、テンションが緩んだ箇所はどこかを振り返り、次回に活かすことが上達への近道です。

また、同じパターンを何度も繰り返すことで、自然と正しい編み方が身につきます。失敗はネガティブに捉えるのではなく、学びのチャンスとして前向きに取り組む姿勢が、上達への一番の鍵となります。


長編みの立ち上がりは、編み物の仕上がりを大きく左右する重要なポイントです。

特に細部の仕上がりにこだわる人ほど、この立ち上がりの綺麗さが全体の完成度を高めることを実感しています。隙間をなくすことで編み目の流れがスムーズになり、よりプロフェッショナルな印象を与える作品に仕上げることができます。

この記事で紹介したコツやテクニックを活用して、隙間のない美しい編み地を目指しましょう。小さな改善の積み重ねが、大きな技術向上につながります。

編み物は繰り返しの中で自然にコツを掴んでいける手芸です。編むたびに少しずつ上達していく過程も楽しみながら、ぜひ理想の作品づくりに挑戦してみてください。これからも、あなたの編み物ライフがより充実したものになることを願っています。

 

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