布端の処理にはさまざまな方法がありますが、中でも「巻きかがり縫い」は、見た目も美しく、さらに耐久性にも優れた縫い方として高く評価されています。縫い目が装飾的な役割も果たすため、機能性とデザイン性を兼ね備えている点が大きな魅力です。
ハンドメイド作品、パッチワーク、小物づくり、マスコット制作など、幅広いジャンルで活用されており、作品の完成度を一段と高めてくれます。初心者でも習得しやすい点もメリットで、基本を覚えれば応用もしやすく、手縫いでもミシンでも取り入れられる万能な技法です。
この記事では、巻きかがり縫いの基礎から実践的な縫い方、さらにはハンドメイド作品への応用法や刺繍との組み合わせアイデアまで、丁寧にわかりやすくご紹介していきます。
巻きかがり縫いの基本を学ぼう
巻きかがり縫いとは何か
巻きかがり縫いとは、布の端を丁寧に巻き込みながら、糸でかがることで布端を保護し、同時に装飾的な縫い目を作り出す技法です。この縫い方は布のほつれを防ぐとともに、美しいステッチが表に現れるため、実用性とデザイン性を兼ね備えた方法として広く用いられています。
布端がすっきりと整うため、ハンドメイド作品やパッチワーク、小物づくりなど、仕上がりの美しさが求められる制作物に多用されます。特に、切りっぱなしの布をそのまま使う場面では、この巻きかがり縫いが非常に重宝されます。
巻きかがり縫いと他のかがり縫いの違い
かがり縫いにはさまざまな種類があり、「ブランケットステッチ」「オーバーロックステッチ」などが代表的です。その中でも巻きかがり縫いは、“巻き込み”という特有の工程を含む点で他と一線を画します。
ブランケットステッチは端を固定しつつ装飾性もありますが、巻き込みは行いません。一方、オーバーロックはミシンで行うことが多く、スピードと耐久性を重視しますが、手縫いでは実現しにくい仕上がりになります。
巻きかがり縫いは、縫う人の手加減により表情が変わる手縫いならではの味わい深さが魅力です。
巻きかがり縫いに必要な道具
巻きかがり縫いに必要な道具は非常にシンプルです。まずは針と糸、そして対象となる布が基本となります。針は細すぎず中程度の太さで、縫いやすい長さのものがおすすめです。糸は、やや太めで強度があり、かつ装飾性を高めたい場合には光沢のある刺繍糸などを選ぶとよいでしょう。布の素材に合わせて糸の色や太さを調整することも大切です。
加えて、糸通しやチャコペン、まち針やクリップなどがあると縫い始めが安定し、よりスムーズに作業を進めることができます。作業中に布を固定するための作業台やアイロンも準備しておくと、さらに仕上がりがきれいになります。
巻きかがり縫いの縫い方
巻きかがり縫いの基本的なやり方
- 布端を約5〜10mm程度内側に折り返し、アイロンでしっかりと折り目をつけて形を固定します。これにより、縫いやすくなるだけでなく、仕上がりも整います。
- 折り返した布端の端から針を通し、糸を軽く引き締めながら固定していきます。最初の一針は二重にしておくと、糸が抜けにくく安心です。
- 一定間隔で針を表から裏、裏から表へと出し入れし、糸を布端に沿って丁寧に巻きつけていきます。ステッチの間隔は5mm前後を目安にすると均一な仕上がりになります。必要に応じて縫いながら折り目を指で整えると、縫い目がきれいに揃います。
- 縫い終わりには、最後の糸を数針裏側に通してから玉止めし、余った糸を切って整えます。これで巻きかがり縫いの基本工程が完成します。
生地の縫い代の処理方法
布の種類や厚みに応じて、縫い代の折り返し幅を適切に調整することが、仕上がりの美しさに直結します。
綿やリネンなど比較的薄手の布では、約1cm前後の折り返しが標準です。これに対し、フェルトやデニムなど厚手の布の場合は、1.5〜2cmほどとやや広めに取ることで、布の重なりがしっかりと収まり安定します。また、角の部分では斜めにカットしてから折ると厚みが集中せずきれいに仕上がります。
かがり縫いのステッチの使い方
ステッチの幅や糸の張り具合を工夫することで、巻きかがり縫いの印象が大きく変わります。細かく密にステッチを入れることで、布端をしっかりと固定しながら高級感のある仕上がりになります。一方、粗めにゆったりと縫うことで、ナチュラルで優しい印象を演出できます。
糸の色を変えるだけでもアクセントになりますし、異なる太さの糸を組み合わせて独自のテクスチャを加えるのもおすすめです。また、同じ縫い方でも角度を変えることで、放射状や波形など、さまざまな模様を作ることも可能です。
巻きかがり縫いのコツと注意点
布端を綺麗に仕上げるためのコツ
ステッチの間隔を一定に保つことが、巻きかがり縫いを美しく仕上げるための重要なポイントです。不規則な間隔では見た目が乱れてしまうため、あらかじめチャコペンなどでガイドラインを引いておくと初心者でも安定して縫うことができます。
また、縫う際には布端をしっかりと糸で巻き込むように意識し、隙間なく丁寧に縫い進めることが重要です。縫い始めや縫い終わりの部分では特に緩みが出やすいため、数針を重ねて補強すると仕上がりが整います。さらに、ステッチの角度や糸の色を工夫することで、装飾性を高めることもできます。
縫い目や始末の注意点
美しい仕上がりを保つためには、糸の始末を丁寧に行うことが欠かせません。糸の終わりは布の裏側に針を通し、目立たないように隠すことで、作品全体がより洗練された印象になります。玉止めをする際は、なるべく小さく目立たない位置に行うとよいでしょう。
また、糸を強く引きすぎてしまうと、布地が引きつれて波打ったり、縫い目が浮いてしまったりする原因になります。縫いながら糸の張り具合をこまめに確認し、適度なテンションを保ちながら作業するのが理想的です。
ミシンを使った巻きかがり縫いのポイント
ジグザグステッチ機能付きのミシンを活用することで、手縫いの巻きかがり縫いに近い効果を効率的に得ることができます。特に、布端に沿って均等なジグザグステッチを施すことで、ほつれを防ぎつつ装飾性も備えた縫製が可能になります。
ミシンで行う場合は、糸調子と押さえの圧力を適切に調整することが大切です。布が厚すぎたり薄すぎたりすると、波打ちや縫いズレが発生しやすくなるため、試し縫いをして設定を見直すと安心です。また、布端が折れたり丸まったりしないよう、軽くアイロンをかけて整えておくとスムーズに縫うことができます。
ハンドメイドにおける巻きかがり縫いの活用
パッチワークでの巻きかがり縫いの応用
パッチワークのピースをつなぐ際にも巻きかがり縫いは非常に有効です。布端を包み込むように縫い合わせることで、耐久性を高めつつ、見た目にも温かみのある印象を与えます。
特に、手縫いによる巻きかがり縫いは、作品全体に柔らかく優しい風合いを加え、ひと針ひと針の丁寧さが作品に表れます。ピースごとの色糸を変えたり、ステッチ幅を調整することで、パッチワークのデザイン性を高める演出も可能です。
また、裏地の仕上げにも巻きかがり縫いを用いることで、裏側まで美しい仕上がりとなり、長く愛用できる作品に仕上がります。
フェルトや布端をおしゃれに仕上げるアイデア
フェルト作品では、巻きかがり縫いの装飾効果を最大限に活かすことができます。布端を処理するだけでなく、ステッチ自体がデザインの一部として活躍するため、あえて目立つ色や太めの糸を使うのも効果的です。
ステッチにリズムを持たせて幾何学模様風に仕上げたり、角を丸くした布端に沿って縫うことで、柔らかく愛らしい印象を演出できます。さらに、複数色の糸を組み合わせてグラデーションのような効果を狙うなど、個性的な作品づくりにも向いています。
マスコット作りでの巻きかがり縫い
ぬいぐるみやマスコットのパーツを縫い合わせる際にも、巻きかがり縫いは大活躍します。特に手縫いによる巻きかがりは、布の端がめくれにくく、丸みを帯びた形状を自然に作り出せるため、立体的な作品との相性が抜群です。
外側から縫い合わせることで縫い目をあえて見せるデザインにしたり、異素材の布を組み合わせてコントラストをつけるなど、個性を表現する手段としても使えます。また、小さなパーツの接合にも対応しやすく、細かい作業が求められるマスコット作りにおいては、安定した仕上がりを実現する信頼の縫い方と言えるでしょう。
巻きかがり縫いと刺繍の融合
刺繍との組み合わせで魅力的に
巻きかがり縫いをベースにして、刺繍のモチーフを重ねることで、立体感と装飾性が格段にアップします。例えば花柄の中心に巻きかがりを取り入れることで、ステッチが花びらのように広がり、より立体的な表現が可能になります。
幾何学模様や文字の輪郭を巻きかがり縫いで囲むことで、刺繍のデザインが引き締まり、視覚的なアクセントとしても機能します。特に濃淡のある糸を用いてグラデーションを作ると、作品に深みと奥行きが加わります。
ステッチの密度や角度を調整することで、さまざまな質感を表現することもでき、手仕事ならではの表現力を高める手法としても注目されています。
コラボ作品のアイデア
巻きかがり縫いと刺繍を組み合わせたコラボ作品としては、コースターやポーチ、小物入れなどの布小物が特におすすめです。
布の縁を巻きかがり縫いで丁寧に仕上げることで、全体に統一感と高級感が生まれます。中央部分に花や動物、文字などの刺繍を施すと、装飾性が一気に引き立ち、プレゼントや販売用としても魅力的な作品に仕上がります。
さらに、布と糸の色の組み合わせや、異素材を取り入れたデザインにすることで、個性あふれるオリジナル作品が完成します。
独自のパターン作り
巻きかがり縫いを応用してオリジナルのステッチパターンを作ることは、創作の楽しさを大いに広げてくれます。
放射状に縫い広げて太陽や花を表現したり、渦巻き状にステッチして動きのあるデザインに仕上げたりすることで、布地全体がアート作品のように生まれ変わります。
また、糸の太さや種類(ラメ糸、段染め糸など)を変えることで、視覚的な変化が生まれ、より立体感のある仕上がりになります。巻きかがりと他のステッチを組み合わせて独自の模様を作ることで、誰にも真似できない、あなただけの表現を楽しむことができます。
まとめ
巻きかがり縫いは、ただの布端処理にとどまらず、作品に個性と美しさをプラスできる便利な技法です。布の端を丁寧に巻き込んでかがるこの縫い方は、見た目の整った仕上がりと耐久性を両立できるため、さまざまなハンドメイド作品において重宝されています。
基本の縫い方さえマスターすれば、応用も自在で、ステッチの角度や糸の種類によって表現の幅を大きく広げることができます。手縫いでもミシンでも対応可能なので、初心者から上級者まで幅広く活用でき、作品に温かみや手作り感を加えることができます。
また、パッチワークや刺繍との組み合わせ次第では、巻きかがり縫いが装飾の主役になることも。布端の処理に迷ったら、ぜひ巻きかがり縫いを取り入れて、あなたのハンドメイド作品をより楽しく、おしゃれに、そして完成度の高いものへと仕上げてみてください。