大学生活の集大成ともいえる「卒業式」。この一大イベントは、友人や家族、恩師とともに成長を喜び合う大切な時間として、多くの人にとって特別な意味を持ちます。
しかし一方で、「行かなくてもいいのでは？」と考える学生も少なくありません。人それぞれに事情があり、例えば就職活動や引っ越しの準備、経済的な理由、あるいは人付き合いのスタイルなどによって、欠席を選ぶ人もいます。実際に、卒業式に出席しないことは決して珍しいことではなく、選択肢の一つとして定着しつつあります。ただし、その決断にはプラス面とマイナス面の両方が存在し、後々の気持ちや人間関係に影響する可能性もあります。
本記事では、大学の卒業式に行かない場合に具体的にどんなことが起こるのか、考えられるメリットやデメリット、欠席の際に必要な手続きや注意点、さらにはその後の生活への影響を解説します。
大学の卒業式に行かない選択とは？
卒業式を欠席する理由
卒業式を欠席する理由はさまざまです。
- 人混みが苦手で長時間の集まりにストレスを感じる
- 仕事や留学準備、国家試験など次のステップに追われていて余裕がない
- 地元に帰るための交通費や宿泊費がかかり、経済的に負担が大きい
- 式典自体にあまり興味がなく、儀式的な場が性格的に合わない
- 友人関係が薄く、出席しても一人で過ごすことになりそうだと感じる
- コロナ禍以降、人が集まるイベントを避けたいという健康面での理由
このように、個人の事情や価値観によって判断するケースが多くあります。背景には心理的な要素や社会的な環境も関係しているため、単に「行きたくない」という理由だけではなく、多面的に考える必要があります。
行かない選択をする学生の割合
実際には、全員が出席しているわけではありません。大学によって違いはありますが、数％から1割程度の学生は卒業式に参加しないといわれています。特に大規模大学では、人数の多さから出席率が100％になることは少なく、出席しない学生も珍しくありません。
また、通信制大学や社会人学生の場合、仕事や家庭との両立が難しく、参加率はさらに低くなる傾向があります。学部や専攻によっては「ほとんど顔を合わせたことがない」という学生も多く、そうした場合には式典に参加する意味を見出しにくいこともあるのです。
親不孝と卒業式欠席の関係
「親に晴れ姿を見せられないのは親不孝では？」と考える人もいます。確かに、親にとって子どもの卒業は大きな節目であり、これまでの学費や生活支援への感謝を形にできる瞬間でもあります。ただ、本人の意思や事情を尊重することも大切です。親にとっては一緒に写真を撮ったり会場の雰囲気を味わったりすることが喜びになりますが、それが難しい場合には別の形で感謝を伝える工夫が可能です。
例えば、後日学位記を持ち帰って記念撮影をする、家族だけでお祝いの会食をするなど、欠席しても親孝行の方法はあります。事前に親に気持ちを伝えておけば、理解を得やすくなり、関係が悪化することを防げます。
卒業式に行かないメリットとデメリット
参加しないことで得られる時間
卒業式は一日がかりになることも多いです。朝早くから式典に参加し、式後は友人や先生と記念撮影をしたり謝恩会に出席したりと、丸一日が卒業関連の予定で埋まることも少なくありません。出席しないことで、その時間をアルバイトや就活準備、資格勉強、趣味の活動や休養にあてることができます。
例えば就職活動の準備をしている学生にとっては、履歴書やエントリーシートの作成に時間を割けたり、面接練習を行えたりと実益を得られるでしょう。また、体調を崩しやすい時期に無理に出席しないことで、自分の健康を優先できるという利点もあります。
行かないことの後悔とは？
一方で、数年後に「友達と最後の写真を撮っておけばよかった」「恩師に直接お礼を伝えればよかった」と後悔する人もいます。
その場の判断で欠席しても、思い出の機会を逃す可能性がある点は考えておきましょう。特にSNSなどで同級生の集合写真を見ると、自分だけがその場にいなかったことを寂しく感じるケースも少なくありません。
後悔を避けるためには、卒業式に出席できなくても友人と個別に会って写真を撮るなど代替手段を考えておくのもおすすめです。
友達との関係に与える影響
卒業式は、同級生と顔を合わせる最後の機会です。行かないと、友達と自然に別れの挨拶をする機会を逃してしまうかもしれません。直接言葉を交わせないことで「疎遠になった」と感じる友人もいるでしょう。
ただし、LINEやSNSを活用して感謝や別れのメッセージを送ることで、関係を保ち続けることも可能です。むしろ一対一で心のこもった言葉を伝えることで、形式的な挨拶よりも強い印象を残せる場合もあります。
卒業証書の受け取り方法
卒業証明書の郵送手続き
卒業式に参加しなくても、卒業証書や証明書は大学から郵送してもらえる場合がほとんどですが、大学によって対応が異なる場合がありますので、必ず在籍校に確認してください。
多くの場合、卒業予定者には郵送申請用の案内が配布され、指定された申請フォームや書類を提出することで手続きが完了します。郵送には数日から数週間かかることがあるため、引っ越しを控えている人は住所変更の届け出を早めに行うことが大切です。
さらに、送料が自己負担となるケースや、配達方法が限定されていることもあるので、事前に学生課や教務課に確認し、必要な申請や費用の準備をしておきましょう。
学位記をなくした場合の対処法
もし卒業証書（学位記）を紛失してしまった場合、多くの大学では再発行ができません。その代わりに「卒業証明書」を発行してもらう形になります。
卒業証明書は正式な書類として就職や進学、資格試験の際に利用できますが、学位記と違って見た目の記念性はありません。紛失防止のため、額縁に入れて保管したりコピーを取って別に保管するなど、日常的な管理にも注意を払いましょう。
また、紛失時には速やかに大学に連絡し、発行可能な証明書や手続き方法を確認することが重要です。
卒業式に出席しないと受け取れないもの
卒業式限定で配布される記念品や冊子などは、欠席すると受け取れない場合があります。
例えば、同窓会名簿や大学オリジナルの記念グッズ、式典後に配布される記念アルバムなどはその場でしか手に入らないことが多いです。必要であれば大学に確認してみましょう。
友人に代理で受け取ってもらえるケースもありますが、必ず事前に大学側のルールを確認することをおすすめします。
卒業式を欠席する具体的な方法
事前の連絡方法
欠席する場合は、事前に大学へ連絡するのが基本です。学部ごとに担当窓口があるので、早めにメールや電話で伝えておくと安心です。
大学によっては専用フォームやオンライン申請システムが設けられている場合もあり、文書での届け出が必要とされることもあります。また、連絡の際には欠席理由を簡潔に伝え、証書の受け取り方法についても併せて確認しておくとスムーズです。
場合によっては保証人や保護者の署名を求められるケースもあるため、余裕を持って行動することが大切です。
卒業式のスケジュールと時間の調整
欠席の理由が「時間的に難しい」場合、卒業証書の受け取りだけ別日に対応してもらえることもあります。多くの大学では学位記交付日を数日に分けて設けており、混雑を避けて受け取れることもあります。調整可能かどうか、大学に確認しましょう。
遠方に住んでいる学生の場合は郵送対応を依頼できる場合もあるため、受け取り方法の選択肢を確認しておくことが重要です。
欠席の際の注意点とは？
連絡を怠ると、証書の受け取りが遅れたり、大学側に迷惑をかけたりすることがあります。欠席すると決めたら、必ず大学の指示に従いましょう。
加えて、欠席連絡を怠ると、名簿や記録上「無断欠席」と扱われる可能性があり、事務処理に時間がかかってしまうこともあります。
円滑に証書を受け取るためにも、余裕を持った手続きを心がけ、大学からの案内メールや掲示板をこまめにチェックすることが望ましいです。
行かないことによる影響
就職活動における証明の必要性
卒業証書や卒業証明書は、就職活動や資格試験で提出を求められることがあります。卒業式に出なくても取得できますが、必要なときにすぐに取り寄せられるよう準備しておきましょう。
特に新卒採用の場面では、入社前に卒業証明書を求められるケースが一般的で、郵送手続きをしても届くまでに数日から数週間かかることがあります。海外留学や大学院進学を考えている場合も、出願に必要な書類として証明書が必須となるため、余裕を持って発行申請を行うことが望ましいです。
また、卒業から数年経ってから証明書を求められることもあり、その際には発行窓口や方法が変わっている場合があるため、大学の公式サイトを定期的に確認しておくと安心です。
卒業式欠席がもたらす社会的評価
「卒業式に出なかった」という事実自体が社会的に評価を下げることはほとんどなく、一般的には評価に直結しにくいものの、周囲の反応は人によって異なります。親や友人の中には「なぜ出なかったの？」と疑問を持つ人もいます。
社会人になってから話題になった際に「実は参加しなかった」と伝えると、驚かれることはありますが、それが直接的に人間関係や仕事上の評価に影響することはほぼありません。むしろ、自分の意思で選択した理由をしっかり説明できれば、個性や価値観を理解してもらえることもあります。
卒業式参加の意義を再考する
卒業式は単なる儀式ではなく、学生生活の一区切りをつける場でもあります。参加するか欠席するかは自由ですが、その意味を一度考えてから決めるのがおすすめです。
式典は、仲間や恩師とともに最後の時間を共有し、自分自身の成長を振り返る貴重な機会でもあります。欠席することで得られる自由や時間も大切ですが、参加によって得られる精神的な充実感や思い出の価値も軽視できません。将来振り返ったときに、どちらの選択を自分が納得できるかを想像してみることが、後悔のない判断につながります。
まとめ
大学の卒業式に行かないことは決して珍しくありません。実際に、多くの学生がさまざまな理由で欠席を選んでいますし、その判断は一人ひとりの人生観や状況によって大きく異なります。メリットもデメリットもあるため、自分の状況や価値観に合わせて選ぶことが大切です。
例えば、時間を有効に使える一方で思い出の機会を逃すかもしれないといった点は、よく比較検討すべき部分です。欠席する際は、大学への連絡や証書の受け取り方法をしっかり確認しておきましょう。また、家族や友人への配慮を忘れずに、理解を得られる形で伝えておくことも安心につながります。大切なのは「自分にとって後悔のない選択」をすることです。
